column Cメロディサックスについて

 2001年3月21日コラム「日本のサックスの歴史」で紹介したように、欧米においては、アドルフ サックス、セルマー、バック氏などのプレーヤーが楽器制作や製造業を興した。アドルフサックスは、サクソフォーン族の開発にあたり、キーの設定を当初CとFとする方針で進めていた。
 しかし、納品先である軍楽隊の楽器編成は、BbとEbの楽器が多く、ゆえにサクソフォーン族のキーもBbとEbとに設定した方が軍楽隊にとっては受け入れ易かった。
 一方、アメリカでサクソフォーンが普及しだしたころ、プロサックスプレーヤーはBbとEbの楽器を使用し、吹奏楽や小編成のダンスバンンド、オーケストラなどで演奏していたが、パーティなどの野外での演奏も多かった。
 1920年1月17日憲法修正第18条(禁酒法)がアメリカで施行されると、野外での演奏を控えるようになった。
 しかし、相変わらず室内ではパーティが行われており、ピアノやギターが演奏されていた。そしてそれらのピアノやギターの譜面を移調せずに、直接読んで演奏できるCメロディサックスがアマチュアサックスプレーヤーの間でその便利さから流行していった。当然メーカーもコーン社製を始めとして、かなりの数のCメロデイサックスがこの時代に製造された。
 1929年10月24日[暗黒の木曜日]5日後の29日[悲劇の火曜日]の大恐慌の始まりにより、アメリカは一変した。この大恐慌により、演奏する環境自体がほとんど無くなり、Cメロディサックスは押入れの中にしまわれたり、アンティックショップや質屋に流れていき、あっという間に姿を消していった。
 1933年、第33代大統領フランクリンルーズベルトの就任で、最悪の経済危機は回避され禁酒法も撤廃されるのだが、以後、サクソフォーンプロプレーヤーやアマチュア愛好家の間では、BbとEbのサクソフォーンが定着し、Cメロディサックスはあまり見かけなくなっていく。
 ところが、現在、再びCメロディサックスがマニアの間で話題となっている。又、キリスト教会では、賛美歌のテキストをそのまま吹いてもピアノやオルガンと合わせることができる便利さから重宝がれている。
 吹奏楽においても、オーボエとCメロソプラノサックスのユニゾンやアンサンブルは独特のサウンドを出すことができる。私もCメロディサックスを何本かリペアして試奏したが、C独特のピュアな音で面白かった。今、現在、回りを見ていると、皆同じような楽器を使い同じような音を出している。Cメロデイサックスに限らずアメリカンビンテージサックスは、C、Bb、Eb、それぞれ独自の音を持ち、個性豊かである。
 完全にリペアされた、コーン、ブッシャー、キング、そしてフランスのSMLのサクソフォーンのような音を聞くとなぜか、ほっとする時がある。

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